すでに人の住んでいない家の窓もある。

これから人の住む家の窓もある。

いま人の住んでいる家の窓もある。

それらと対面した時、いろんな映像が脳裏で再生されるのは私だけだろうか。

窓越しに大声で世間話をしているおばちゃんたち。子供にいってらっしゃいと手を振るお母さん。夜の暗闇の中、オレンジ色に浮かび上がる窓の光。その中には楽しそうな家族の団欒。ソファに腰掛けテレビを見ている皺だらけのおばあさん。酒を酌み交わす男たち。太平洋が見えるその窓からは朝日や潮風が惜しみも無く入ってくるだろう。

さらには、その窓の周りには年月を重ねてきた壁。まるで老齢のおじいさんの顔に刻まれた深い皺のようである。この壁たちはどのようなドラマをこれまで見てきたのだろうか。過去には日本時代も経験しただろう。国民党による白色テロも見てきただろう。結婚式や誕生日の嬉しい日も、葬式の悲しい日もみんなを見守ってきただろう。

そしてこれからどんな人間ドラマを見ていくのか。

そんなことを思うとカメラを向けざるをえないのである。